マカの起源や現代まで受け継がれてきた歴史
ビタミンやミネラル類、アミノ酸などの栄養素を豊富に含むマカは、原産地のペルーでは日常に用いられる根菜類の一つであるうえ、主に健康維持を目的とした貴重なエネルギー源として重宝されています。
日本にマカが正式に輸入されたのは1997年の秋と、比較的近年ですが、マカの栽培はすでに2,000年も前からおこなわれていたことが、記録で明らかにされています。
この記事では、アンデスの高原地帯に住む人々が元気に生活し、子孫を残すための大切な食材として現在に至っている、マカの歴史の概要についてご紹介します。
マカの起源とは?
南米ペルーのアンデス山脈が連なる、標高4,000mを超える高原地帯を原産とするマカは、高地で暮らす現地の人たちには身近な根菜の一つであり、豊富な栄養素を含んだ貴重な食材として扱われています。
現在では、ペルーの外貨獲得の貴重な商品でもあるマカは、もともとチベット北東部の海抜3,205mの高地にある、中国最大の湖である青海湖の周辺地域に自生していた植物と伝えられています。
約2,000年前にこの地で生活していたチベット族の一部が、ペルーに移住する際に携帯していたマカを現地に持ち込んだとされ、その後フニン地域のボンボン高原において栽培をおこなったのが始まりと考えられています。
当時の交通事情から推測すれば、移動の際に必要な荷物は厳選して極力減らすのが合理的といえるところに、わざわざマカを加えたということは、彼らにとってそれがいかに貴重な食材だったかを物語っています。
インカ帝国におけるマカの存在とは?
上記のように、アジアからペルーに渡ったマカは2,000年も前から、過酷な自然環境のアンデス高地で栽培されていたことが記録に残されています。
さらに、インカ帝国の時代から品種改良もおこなわれず大切に育てられ、現在まで伝わってきました。
インカ帝国とは、先住民族のインディオの人たちによってつくられ、15~16世紀にかけて約100年つづいた大帝国で、その維持は短期間なものの強大な武力を持ち、現在のペルーのクスコを中心に栄えました。
海抜3,000mの高地に位置するクスコに都を築いたため、酸素が薄く昼夜の寒暖差が激しい自然環境で生きる人々は肉体的に過酷な状況にあり、体力を消耗しがちだったのです。
そうした人々を支えてきた食物の一つがマカであり、この時代には特に体力を使う兵士たちにとって「食べる」ことは最重要であることから、マカは男性の強壮食として珍重され、体力や繁殖力を養う食材としても重視されていました。
一方で、若い未婚の男女がマカの摂取で性欲が亢進し、風紀が乱れるのを防ぐためや、戦争で制圧した町に駐留する兵士による性犯罪の防止のため、マカを食べることを禁じていたという逸話もあります。
マカは本来、政治や宗教に携わる特権階級の人々だけが食べられるものとされていましたが、戦果を挙げた兵士への褒賞として与えられたとも伝わっています。
マカの効能がインカに滅亡をもたらした?
インカ帝国が北は現在のコロンビアから、南はチリまで5,000kmにも及ぶ広大な地域を支配できた背景には、主食であるジャガイモの保存方法が確立されたことに伴い、長距離の移動が可能になったという指摘もあります。
一説ではインカ民族は、ほかの部族との覇権争いの際、皇帝が兵士に体力と気力をつけさせるのを目的に、マカを食べさせていたとも伝えられています。
マカに含まれる栄養成分は、栄養学が確立されていない当時には解明されていなかったにもかかわらず、人々が実体験から得た結果により、それだけ高い価値があると判断されていたのです。
しかし、1500年代に始まったスペイン軍によるインカ帝国の侵略により、あっけなく滅亡してしまった原因の一つが、皮肉にもマカといわれています。
スペイン軍はインカ帝国への侵攻の際、多くの馬を持ち込みましたが、インカ帝国の人々には初めて見る動物でした。
戦いの際にスペインの騎兵が現れると、いかに勇猛なインカ帝国の兵士も恐れをなして逃げたといいます。
ところが、戦争に必須である馬がアンデスの高原地帯の過酷な環境に適応できずに、徐々に弱って次々と倒れていき、雌馬も仔馬を産めず、数が減ってしまったのです。
そこでスペイン軍の兵士が、現地の人がリャマや羊などの家畜にマカを与えているのを見て、その効能に注目しました。
弱った馬をマカの自生している土地に放した結果、もくろみどおりそれを食べた馬が元気を取り戻して繁殖にも成功し、インカ帝国の征服へとつながったということです。
インカ帝国の滅亡以後から現代
インカ帝国を征服したスペインはキリスト教の布教のため、現地の人々にそれまでの太陽神への信仰を禁止するとともに、供物であったマカの栽培も禁じました。
そのため、マカは絶滅寸前の状況にまで陥ったものの、山間部で栽培が密かにつづけられてきたのです。
1980年代に発見されるまでその状況がつづいたため、マカの存在は周知されず、ペルーでも平地に住む人たちは存在すら知らなかったといいます。
マカを発見したのは、アンデス山脈の高原地帯を訪れたアメリカ人旅行者で、現地の老人の健康と若々しさを支えているのがマカであることが分かってから、世界中に広まるきっかけとなったのです。
引用元
マカの歴史を紐解く
http://www.illuminated-books.com/16.html